金融の日々

経済、金融工学(デリバティブ)や金融制度等について話題

【債券デリバティブ講義】金利モデルについて③ 金利スワップモデル練習編(計算シート例付)

計算シート例はこちら:SimpleLiborModel.xlsm

ここではフォワード金利・線形補間型モデルを例にとって金利スワップモデル構築実際に行います。


実践編はひたすら 計算の世界です。計算シート例を添付したので、マーケット情報が変わったらどのようにフォワード金利が変わるか確かめてください。

 

マーケット情報 (インプット)

Inustrument
Number
Instrutment
Type
Tenure Rate
1 Libor 6m 0.03
2 SwapRate 1Y 0.0325
3 SwapRate 18m 0.035
4 SwapRate 2Y 0.03875
5 SwapRate 3Y 0.04875
6 SwapRate 4Y 0.06625
7 SwapRate 5Y 0.09
8 SwapRate 6Y 0.11625
9 SwapRate 7Y 0.145
10 SwapRate 8Y 0.1775
11 SwapRate 9Y 0.21125
12 SwapRate 10Y 0.24875
13 SwapRate 11Y 0.29
14 SwapRate 12Y 0.33375
15 SwapRate 15Y 0.4725
16 SwapRate 20Y 0.66375
17 SwapRate 25Y 0.795
18 SwapRate 30Y 0.88375

モデル(前提条件)

6mLibor金利でお金が借りれる。

フォワード6mLibor金利は線形補間される

金利は常にぴったり半年払い(0.5×金利

※計算を 簡単にするため

 

結果(別名:アウトプット)

 

f:id:fixed-income:20180204154221p:plain

f:id:fixed-income:20180127153623p:plain

解法

1)6m Liborを以下のようにモデル化。

f:id:fixed-income:20180204155056p:plain

  i:Instrument Numberです。

f:id:fixed-income:20180204155318p:plain:Tenure - 6m (year) ( Tenureが2Yなら1.5)

 

2)以下が成り立つf:id:fixed-income:20180204160031p:plaini=0から順に求めていく

f:id:fixed-income:20180204155552p:plain

f:id:fixed-income:20180204155947p:plain

 

f:id:fixed-income:20180207224015p:plain

 

※i=0,1ぐらいの時は式が簡単ですが、ニュートン法など数値計算で求めてしまうと楽です。

【債券デリバティブ講義】金利モデルについて② 金利スワップモデル例

金利モデルについて①」で、以下を求めることができました。

 

  • 1年間/6カ月間の 割引率(ディスカウントファクター)
    1年/6カ月後にもらえる現金を現在時点の価格(現在価値)に割引する比率
  • 6か月後のフォワード金利
    6カ月後の6カ月間金利の価値

一方で、特定の6か月後以外の特定の月の値はどうやって求めるのでそうか?

例えば、

  • 9カ月間の割引率(DF(9m))
  • 3カ月後の6カ月間金利(6mLibor(3m))

はどうやって求めるのでしょうか? 

市場価格から求められる6か月と1年後の割引率は求められるけど、その間は?

現時点と6か月後の6か月間金利の価値は計算できたけど、じゃあ3か月後の6カ月間金利はどうやって求めるのでしょうか?

 

答えは・・・"適当にそれっぽい値を求める!" です! 

 

「え、なにそれ?」って思う方も多いかもしらませんが、金融業者はみんな適当にそれぞれ計算しています。ここではその方法、であるデリバティブを説明します。まずは、これから使う記号の説明を一応しておきましょう。

 

 

方法その1:フォワード金利・リニア補完方式

直接求めることができる6mLibor (6m)などのフォワード金利を線形補完します。 

以下の図を見てください。

f:id:fixed-income:20180204153402p:plain

線形モデルを仮定して、フォワード6カ月金利を求めたものです。

点と点の間が直線で(リニアに)補完されているのがわかります。

 

計算の仕方は求め方は簡単です。例えば、3カ月後の6カ月金利でしたら、

6mLibor(3m) = (6mLibor (0)+6mLibor (6m)) / 2

*6mLibor (0):現在の6カ月金利

* 6mLibor (XX m) = XX カ月間後の6カ月金利

 

現在と6カ月後の6mLibor金利を足して2で割った値になります。

 

6か月金利が渡ると、それに対応するDFも計算できます。

DF(9m) = DF(3m) × 1 / (1 + 0.5 * 6mLibor (3m)) 

* DF(XX m) = XX カ月間の割引率ー

いま、6カ月以下の金利情報が無いので3ヶ月金利は求まらないのですが、その話は本題からそれるので、今回は6カ月以下の金利は一定と仮定しておきましょうか。そうすると、

DF(9m) = 1 /  (1 + 0.25 * 6mLibor (0)) / (1 + 0.5 * 6mLibor (3m))  

と、6mLibor (0) と 6mLibor (3m)だけでDF(9m) を求めることができました。一般的に同区間フォワード金利が分かれば、同区間のがディスカウントファクターが計算できます、その逆も成り立ちます。次はディスカウントファクターのほうからモデル化する方式を例にあげましょう。

 

方法その2:ディスカウントファクター・対数線形補完方式

割引率はを対数を取ったうえで線形補完する方式です。

log (DF(9m)) =(log(DF(6m)) + log(DF(12m)) / 2

式を整理して、

DF(9m)  = (DF(6m) x DF(12m)) ^ 1/2

これを先ほどの式の

DF(9m) = 1 /  (1 + 0.25 * 6mLibor (0)) / (1 + 0.5 * 6mLibor (3m))  

 に代入すると、

(DF(6m) x DF(12m)) ^ 1/2 = 1 /  (1 + 0.25 * 6mLibor(0)) / (1 + 0.5 * 6mLibor(3m))  

 式を整理すると、

6mLibor(3m)=2 x ( (1 + 0.25 * 6mLibor (0)) (DF(6m) x DF(12m)) ^ 1/2  - 1 )

 

とこんな感じで 計算できました。一番シンプルな金利モデルはこの二つでしょうか。

 

ちょっと専門的な話になりますが、これらのモデルは変な悪さをすることが無く、とてもシンプルで、導入も楽なので、大抵の銀行はこういったシンプルなモデルを使うのが良いと常々思います。スプライン補完のように時々派手に変な値を出すことはないですし、一方でカーブの本数を増やしていっても安定しているので、ランニングコストがとてもやすく、金利感応度の出方もかなり素直です。これなら大卒の学生を雇うだけでモデルのメンテナンス・増築ができるので、自前のモデル開発も簡単にできます。

【債券デリバティブ講義】金利モデルについて① 基本概念(現在価値・割引率・フォワード金利)

オーダーメード型の金利スワップの値段を包括的に、汎用的に、統一的に決める方法を作りたい。

 

そこで出てくるのが金融工学です。金利スワップ・プライスのモデリングについての一般的な方法を説明しましょう。

 

まず状況を簡単にするため、以下の仮定をします。

 

仮定① 金融機関はMID(仲値)でスワップを取引できる。

仮定② LIBOR金利で無コストで自由にお金を貸し借り(貸すのも借りるのも両方向)できる。

 

実はこの仮定を置くことにより、その金融機関にとって6ヶ月後の1円と現時点での1円価値の差を決めることが実はできます。以下ではその説明をします。

 

現在価値という概念とディスカウンティング・ファクター(割引率)の定義

仮定②より、金融機関はLIBOR金利でお金を無制限に借りることができます。実はこのとき、『LIBOR金利以上で無リスクで(損する可能性が無しで)投資できる金融商品が無い』、という仮定もセットで付けることになります。なぜかというと、そんな商品あったら全部買い占めて無リスクで利益を得に行きますよね?  LIBOR金利で無制限にお金を借りれる前提を置くと、無リスクでLIBOR金利以上のリターンを出す商品は買いつくされます。そのためLIBOR金利とは無リスクで手に入る最低限の金利と考えることができます。

 

こういった、無制限にお金を借りられる仮定を置いた基準となる金利を「リスク・フリーレート」と呼びます。金融工学を成立させる最も重要な前提の一つです。

 

さて、仮定②より導かれる重要な概念に、「現在価値」があります。LIBOR金利で無制限にお金を貸し・借りできる状況では、6カ月間の100万円お金を貸す場合6カ月LIBOR金利分の付利が付きます。つまり、100万円が6か月後100万円×(1+0.5 ×LIBOR金利)になります。

 

「100万円が6か月後に100万円×(1+0.5 ×LIBOR金利)」になる貸し出し取引は無制限にできます。そのため、これは無価値の取引と金融工学では定義します。リスクを取っていないので、誰でもできる無価値な取引という事ですね。

 

ここで以下の等式が成り立つことが分かります。

現在の100万円=6か月後の100万円×(1+0.5 ×LIBOR金利

左辺と右辺を100万で割ると

現在の1円=6か月後の1+0.5 ×LIBOR金利 円

 という事は、

6カ月後の1円の価値             = 現在の1 ÷ (1 + 0.5 ×LIBOR金利)円

(LIBOR金利が0.1%の場合)    ≂    現在の0.9995円

 いかがでしょうか、未来のお金の価値を現在の値段に直すことができました! これが金融工学に置いて最も大事な概念である、未来のお金の「現在価値」です。

特に、未来の価値を現在価値に割り引く係数を割引率(ディスカウントファクター)と呼びます。6か月分の割引率は以下のように計算できます。

DF(6m) = 1 / (1+0.5 ×LIBOR金利)

金利が0.1%の時の6カ月分の割引率は0.9995です、とか、DF(6m)=0.9995とか書きます。

 

フォワード金利という概念               

次にもう一つ重要な概念である、将来の変動金利の現在時点での価値、フォワード金利の説明です。

 6か月後の6カ月間金利は6カ月後にならないと分かりません。ですが、「6カ月後の6カ月金利の値段=フォワード金利」は金利スワップレートから求められます。

例えば

 

金利スワップが将来の変動金利を数年分セットで売買する取引と以前の記事で説明しました。今、仮定①より、金利スワップは仲値で売買できます。つまり、変動金利を売るのも買うのもどちらとも同じ値段で行えますので、金利スワップ自体の価値はゼロです。

 

1年の金利スワップレートが0.11 % とします。100万円分の変動金利を買う(固定金利を払う)としますと、

 

固定金利2回分の価値 - 変動金利2回分の価値=

DF(6m)×100万×6mLIBOR(現在)×0.5+DF(1Y)×100万×6mLIBOR(6カ月後)×0.5-DF(6m)×100万×0. 11 %×0.5-DF(1Y)×100万×0. 11 %×0.5

=0・・・☆式

 

が成り立つことが分かります。先ほど求めたDF(ディスカウントファクター)を用いています。0.5は金利計算区間が半年分(6ヶ月分の金利)なので、0.5をかけています。

 

ところで1年分割引率は6か月分の割引率2回分です。6か月後から数えた6カ月分割引率をDF(6m,1Y)と書くと、一年分の割引率DF(1Y)は

DF(1Y)=DF(6m)×DF(6m,1Y)

 と計算できます。DF(6m,1Y)は、

DF(6m,1Y)= 1 / (1+0.5 ×6mLIBOR(6カ月後))

  と計算できるので、☆式に代入する。

DF(6m)×100万×6mLIBOR(現在)×0.5+DF(6m)/ (1+0.5 ×6mLIBOR(6カ月後))×100万×6mLIBOR(6カ月後)×0.5-DF(6m)×100万×0. 11 %×0.5-DF(6m)/ (1+0.5 ×6mLIBOR(6カ月後))×100万×0. 11 %×0.5=0

 式をとくと

6mLIBOR(6カ月後)

= ( 2×0.11 - 6mLIBOR(現在) ) / (1 + 0.5 x ×6mLIBOR(現在) - 0.5×0.11)

 と計算できます。6か月後の6カ月間金利は分からないんですが、その値段は計算できしまった!フォワード金利はこの様に、現在価値・割引率という金融工学上の重要な導入することによって、スワップレートや現在の6カ月金利などから計算できるようになる将来の金利の価値です。

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