【債券デリバティブ講義】金利スワップと金利スワップ市場について
【債券デリバティブ講義】金利スワップとは将来の変動金利を複数年分セットで売ったり買ったりする取引です。お高く言うと、変動金利指標に連動した金利と、固定金利を交換する取引であり、変動金利と同じタイミングで均等に支払い/受取を行う形で決済を行います。例えば、4年間の金利スワップをキャッシュフロー・ダイアグラムで書き表すと以下の通りになります。
図1.固定金利受けの金利スワップのキャッシュフロー・ダイアグラム
こちらは変動金利を売って、固定金額を4年間半年ごとに分割して受け取っている取引ですね。
金利スワップ取引は日々金融市場で行われており、ブローカーと呼ばれる仲介業者が以下のよう金利スワップのクオート(値段)を見せてます。要は数年分の変動金利に値段がついておりそれを売買できるのですが、支払い方法は変動金利は対応する年限の固定金利の形にすることになっており、その固定金利が値段として市場でついています。そのようにして変動金利と固定金利を交換する形で、LIBOR4年分を市場で買ったり売ったりできるのです。
bid (業者の買値) / offer (業者の売値)
1Y 0.0125 % / 0.0525 %
2Y 0.015 % / 0.055 %
3Y 0.01875 % / 0.5875 %
4Y 0.04625 % / 0.08625%
5Y 0.07 % / 0.11 %
流動性の高い商品(売り買いが頻繁に行われている商品)の場合、直ぐに売り買いできるbid(業者の買い) / offer(業者の売り)の値段が見える。bidはこの値段だったらすぐに買うよ、Offerはこの値段だったらすぐに売るよ、ということです。
2年物(2Y)の金利スワップを買う(固定金利を払い変動金利を売る)と、0.055 %その日の東京2営業日後から数えて2年間半年ごとに固定金利を払う代わりに、購入日と購入日から6カ月毎に決まる変動金利を受け取ることができる。
図2.2年物の固定金利スワップ払いのキャッシュフロー・ダイアグラム
こういった値段が見える金利スワップは、極一部の大手金融業者間のみで取引が行われます。そのごく一部の大手金融機関をスワップ業者などと呼びます。一般的な地域金融機関は定型的な金利スワップを取引せず、オーダーメード型の金利スワップをスワップ業者を担う金融機関に依頼します。
オーダーメードの金利スワップは例えば「10年2カ月の金利スワップ 期初は2カ月間の金利を交換して以降6カ月毎に交換 元本は100億円相当」のような形です。スワップ金利業者同士では10年2カ月の金利スワップなど取引しないので、10年物の金利スワップを90億程度、11年物の金利スワップを10億円程度仕入れて、10年2カ月の金利スワップ相当の取引を複製することになります。
また、金利スワップ市場では一定以上のロットでないと取引されないので、3年 1億円の金利スワップなどもスワップ業者相手に依頼して取引する。
金利スワップ業者の取引は定型化されており、ある一定以上のロット(額面)での取引のみが行われます。円金利スワップは3年物といったら、取引日から2営業日後から開始して3年後の金利スワップを指すという事が取引慣行で決まっている。それぞれの金融取引業者が年限の長さから具体的にどのような取引を指すか瞬時に理解できるようにして、取引の容易さを確保するためです。
以上のことより、金利スワップ市場は、それを専門の生業にして素早く効率的に売買する金利スワップの卸し売り業者、それを仲介するブローカーと、金利スワップを 利用するための”消費者”に近い地域金融機関や保険会社などから成り立つことがよくわかります。図にすると以下のような感じです。
いまいちスワップ市場や金融商品がどのように最終的に個人に結びつくか分かりにくい場合は、食品とのアナロジーで考えると分かりやすいです。
ブローカー:競り専門の業者
スワップ業者:卸売り業者
保険会社・地域銀行:レストラン・スーパー
保険加入者・預金者:レストラン利用者/スーパー利用者
つまり、分かりやすく言うとスワップ業者は肉屋や野菜の卸売り業者と同じ様なものです。売り物が変動金利であるだけの卸売業種兼加工業者です。ただ、動くお金の金額は計り知れないだけで。